Q値ってよく使うけど、こういうもんだ的な理解になってきている気がする(そもそもそれがし、電気電子系出身ではないので基本的知識は「そもそもない」のだが)。一方、ネットで調べてもこんなもんだ的な説明が多い。
「半値幅で共振周波数を割ったもの」をQという説や「強制力による変位の何倍の変位か」をQという説があり(その他、突然、Qを求める式が出てくるもの多数)、どっちも正しいんだろうけど、なぜこれが同じQであり、そして同じ値になるのか。、、、基本的には知っている必要はない。
とはいえ、この単純な問題に正面から取り組んでみる。
第3回は直列共振回路と並列共振回路の相互誘導。
とはいえ、これを真正面から解くのは人間には無理。そして、代数学的に解くのはSympyでもmathematicaでも無理(だった)。いや、とけるっちゃーとけるんだけど、半値幅を出すときに式が長くなりすぎてエラー。で、ちょっと考え方を元に戻してこれらの回路をそれぞれフィルタと考える。フィルタの縦続接続では伝達関数はつないだフィルタの伝達関数の積で表されることから、kがとても小さくて双方の回路に与える影響を無視できるという前提でならいけるんじゃないかと思ってやってみた。
これまでの検討結果から、送信側の電力は \[ P_1=\frac{|V_1|^2R_1}{2|Z_1|^2} \tag{1} \]
共振周波数では、 \[ P_{10}=\frac{|V_1|^2}{2R_1} \tag{2} \]
これまでの検討結果から、受信側の電力は \[ P_2=\frac{|I_2|^2}{2R_2|Y_2|^2} \tag{3} \]
共振周波数では、 \[ P_{20}=\frac{|I_2|^2R_2}{2} \tag{4} \]
ある周波数$\omega$にて \[ P_1=AP_{10} \tag{5} \] \[ P_2=BP_{20} \tag{6} \]
となるとすると、$AB=\frac{1}{2}$のときの$\omega$が送受トータルでの半値幅を与える周波数ということになる(たぶん)。
(5)(6)より、 \[ P_1P_2=ABP_{10}P_{20} \] \[ P_1P_2=\frac{1}{2}P_{10}P_{20} \tag{7} \]
トランスの結合が非常に小さく、双方の回路に与える影響が無視できる場合、
(1)(2)(3)(4)(7)より、 \[ \frac{|V_1|^2R_1}{2|Z_1|^2} \cdot \frac{|I_2|^2}{2R_2|Y_2|^2} =\frac{1}{2} \cdot \frac{|V_1|^2}{2R_1} \cdot \frac{|I_2|^2R_2}{2} \] これより \[ \frac{|Z_1|^2}{R_1^2} \cdot
R_2^2|Y_2|^2=2 \tag{8} \]
\[ Z_1=R_1+j\left(\omega L_1-\frac{1}{\omega C_1}\right) \] より、
\[ |Z_1|^2=R_1^2+\left(\omega L_1-\frac{1}{\omega C_1}\right)^2 \]
\[ \frac{|Z_1|^2}{R_1^2}=1+\left(\frac{\omega L_1-\frac{1}{\omega C_1}}{R_1}\right)^2
\]
これに \[ L_1=\frac{Q_1R_1}{\omega_0} \] および \[ \frac{1}{C_1}=\omega_0 Q_1R_1 \] を適用し、
\[
\frac{|Z_1|^2}{R_1^2}=1+\left(\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega}\right)^2Q_1^2 \tag{9} \]
同様に \[ Y_2=\frac{1}{R_2}+j\left(\omega C_2-\frac{1}{\omega L_2}\right) \] に、
\[ C_2=\frac{Q_2}{\omega_0R_2} \] および \[ \frac{1}{L_2}=\frac{\omega_0 Q_2}{R_2} \]
を適用し、
\[ R_2^2|Y_2|^2=1+\left(\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega}\right)^2Q_2^2
\tag{10} \]
ここで、 \[ \omega_d^2=\left(\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega}\right)^2
\tag{11} \] とすると、(8)(9)(10)より \[ \left(1+\omega_d^2Q_1^2\right)\left(1+\omega_d^2Q_2^2\right)=2 \tag{12} \]
(12)を$\omega_d^2$について解くと、 \[
\omega_d^2=\frac{-\left(Q_1^2+Q_2^2\right)\pm\sqrt{\left(Q_1^2+Q_2^2\right)^2+4Q_1^2Q_2^2}}{2Q_1^2Q_2^2} \]
$Q_1,Q_2,\omega_d^2$は正の実数なので \[
\omega_d=\sqrt{\frac{-\left(Q_1^2+Q_2^2\right)+\sqrt{\left(Q_1^2+Q_2^2\right)^2+4Q_1^2Q_2^2}}{2Q_1^2Q_2^2}} \tag{13} \]
(11)より、 \[ \omega_d=\frac{\omega}{\omega_0}-\frac{\omega_0}{\omega} \tag{14} \]
または、 \[ \omega_d=\frac{\omega_0}{\omega}-\frac{\omega}{\omega_0} \tag{15} \]
(14)より、$\omega,\omega_0$は正の実数、$\omega_d$は実数なので、 \[
\omega=\frac{\omega_0}{2}\left(\omega_d+\sqrt{\omega_d^2+4}\right) \tag{16} \]
同様に(15)より、 \[ \omega=\frac{\omega_0}{2}\left(-\omega_d+\sqrt{\omega_d^2+4}\right)
\tag{17} \]
ここで、(16)は$\omega\gt\omega_0$の場合の解、(17)は$\omega\lt\omega_0$の場合の解である。
よって(7)を満足する2つの周波数があり、その差を$\Delta\omega$とすると、
\[ \Delta\omega=\omega_0\omega_d \]
よって、 \[ Q_{TTL}=\frac{\omega_0}{\Delta\omega}=\frac{1}{\omega_d} \tag{18} \]
(13)より \[
Q_{TTL}=\sqrt{\frac{2Q_1^2Q_2^2}{-\left(Q_1^2+Q_2^2\right)+\sqrt{\left(Q_1^2+Q_2^2\right)^2+4Q_1^2Q_2^2}}} \]
\[ Q_{TTL}=\sqrt{\frac{\sqrt{\left(Q_1^2+Q_2^2\right)^2+4Q_1^2Q_2^2}+Q_1^2+Q_2^2}{2}}
\tag{19} \]
もうちょっと簡単にならんかなーって思うけど、とりあえず、でけたっ!!
で、以前ahkabで計算したときに、
ソース側のQ値は計算値で17.3。受信側のQ値は計算値で11.5。
結果の波形から算出すると、22.5。
だった件で確認してみる。
import numpy as np
Q1=17.3
Q2=11.5
QTTL=np.sqrt((np.sqrt((Q1**2+Q2**2)**2+4*Q1**2*Q2**2)+Q1**2+Q2**2)/2)
print(QTTL)
ってすると、
22.566843180770796
ってなる。あってる!ktkr。
長いことあーでもないこーでもない考えて、やっと、しかし、ふとひらめいた。
潜在意識にまで透徹する強い持続した願望をもつを実践した結果ですよ。(とはいえ、これのために式を何度もこねくり回したので、紙を20枚くらい使ったかも。デジタルの時代でも結局考えるためには紙も必要。)
今までQ値は足し算になると思っていたけど、そうじゃなかったんですねー
ちなみに色々な条件でシミュレーションしてみるとだいたいつねに、足した結果の85%くらいになるっぽい。つまり足したQで通信の要求(側帯波を含んだ帯域幅)を満足していれば、まぁ大丈夫ってこと。それもいつか証明したい。
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